淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク    
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淀川のイタセンパラ
 イタセンパラは、コイ目コイ科タナゴ亜科タナゴ属に属する日本固有の淡水魚で、学名はAcheilognathus longipinnisと表記します。イタセンパラは琵琶湖・淀川水系(琵琶湖は除く)、濃尾平野、富山平野に分布しています。他のタナゴの仲間の殆んどは春-初夏に産卵しますが、イタセンパラは秋に産卵します。産卵期の婚姻色の美しい姿から、淀川のシンボルフィッシュと呼ばれています。
 1971年の淀川の大規模改修計画に伴い、生息地のワンドの消滅によるイタセンパラへの影響を危惧した(財)淡水魚保護協会の運動によって、1974年にイタセンパラは魚類初の国の天然記念物に文化庁によって指定されました。1995年には、環境省によって国内希少野生動植物種(種の保存法)にも指定されました。環境省のレッドリスト(絶滅の恐れのある野生動物のリスト)ではTA類(最も絶滅に瀕している)に分類されています。

写真提供:大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センター
 イタセンパラの産卵期は10月頃の秋です。オスは綺麗な紫色の婚姻色になり、メスはイシガイやドブガイなどの二枚貝の中に卵を産む込むために産卵管という管を伸ばします。オスは貝の周りに縄張りを作り、他のオスを追い払って、メスの産卵を促します。そして、メスは貝の出水管から貝の体内に卵を産みこみます。そこでオスはすぐに、貝の入水管の近くで放精して、精子が貝に吸い込まれて、貝の中で卵は受精します。
 イタセンパラの卵は受精してから、約1週間で孵化します。孵化直後の仔魚は眼や口や鰭の無いイモ虫の様な形をしていて、貝から泳ぎ出る5月頃まで、緩やかに成長します。貝の中での仔魚の成長には、大きな温度の変化(受精から孵化が15〜25℃、低温要求期が5℃、発眼(目に色がつく段階)が10〜15℃、浮上(自ら泳ぐ段階)が20〜30℃が必要です。これは、日本の冬の気候に適応進化したものと考えられています。貝から泳ぎ出た後の成長はとても早く、その年の秋には成熟して産卵します。

写真提供:大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センター
 淀川では、2005年を最後にイタセンパラの確認が途絶えています。そこで、国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所と(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センター(現 生物多様性センター)は共同で、淀川へのイタセンパラ野生復帰の取り組みをすすめています。2009年秋に水生生物センターで飼育しているイタセンパラ成魚500尾を放流したところ、翌2010年春に放流場所付近で稚魚133個体の生息が確認されました。しかし、2011年春には、再びその姿を見ることはできませんでした。そこで、放流場所などを再検討し、2011年秋に、再び成魚500尾を淀川に放流しました。なお、密漁防止等の希少種保護の観点から放流場所等は非公開としています。2013年にはイタセンネットが調査活動を行っている城北ワンド群にも放流しました。
写真提供:大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センター



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