淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク    
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淀川の自然
 淀川のワンド群は、国の天然記念物のイタセンパラをはじめ、多数の生物が生息する自然豊かな水域で淀川に生息する生き物達にとって、とても重要な場所です。
 明治初期、当時水深の浅かった淀川に蒸気船を通すために淀川の水深を深くする必要がありました。そこで、オランダ人技術者のデ・レーケの指導により、ケレップ水制という今のワンドの元となる石で組まれた構造物が淀川に作られました。このケレップ水制に土砂が堆積して池のようになり、現在のワンドとなりました。1960年代までは淀川全域に存在したワンド群も現在では、その後埋め立てられるなどして、30余りを残すのみとなっています。
 近年では、淀川の自然の再生を目指して、国土交通省の淀川河川事務所のもと、淀川上流域にワンドを再生する試みが行われています。

城北ワンド群    写真提供:大阪府環境農林水産総合研究所生物多様性センター
 淀川にはイタセンパラをはじめとする希少な魚介類が生息しています。中でも、ドジョウ科のアユモドキは淀川では1997年を最後に生息記録がありません。淀川水系では現在、京都府亀岡市の河川にわずかに生息している程度です。アユモドキもまた1977年に国の天然記念物に指定されており、2004年には種の保存法に元づく国内希少野生動植物種に指定されました。この法律により、捕獲や譲渡が規制されて、増殖の促進と生息地の保全が行われています。
 この他にも淀川にはワタカやビワコオオナマズ、ヨドゼゼラなどの琵琶湖淀川水系の固有種が生息しています。ワタカは琵琶湖産の稚アユの全国放流に混じって、現在では琵琶湖淀川水系以外の水域にも生息範囲を広げていますが、本来の生息地である琵琶湖と淀川では個体数が激減しています。以前は淀川のワンド群にも多く生息していましたが、現在ではみられません。2007年に環境省レッドリスト絶滅危惧TB類に指定されています。
 現在の淀川は河道が直線化された結果、氾濫原となる砂州が減少し、さらに降雨などによって水位が上昇する区間やその頻度も少なくなりました。そのため、これらの多くの魚類が繁殖できるような冠水域(一時的水域=陸であったところが水没するような場所)が少なくなり、個体数が減少傾向にあると考えられています。

アユモドキ(亀岡産)          写真提供:一般社団法人水生生物保全協会
ワタカ                  写真提供:一般社団法人水生生物保全協会
 近年問題になっている、オオクチバスやブルーギルの外来魚の増加は、在来の魚が食べられたり、餌や生活場所が競合するなどして在来の魚が減少しています。大阪府環境農林水産総合研究所水生生物センター(現 生物多様性センター)が行った、1970年初頭〜2004年の城北ワンドの魚類調査によれば、年代を追うごとに外来魚、特に在来魚に影響のあるこの2種が増えていて、相反するかのように在来の魚は年代を追うごとに減少しています。その後の2008年の国土交通省淀川河川事務所の行ったワンド干し上げ調査でも、約90%の魚類がブルーギルなどの外来魚で、在来の魚はほとんどが外来魚に食べられない大きさのフナでした。また、水生生物センターが2009年に実施した外来魚駆除(55,000尾)の結果、2011年の春には在来魚種のタナゴなどの稚魚が前年に比べ著しく増加するなど効果が表れています。
オオクチバス  写真提供:大阪府環境農林水産総合研究所生物多様性センター
 2005年6月に「外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」が施行されました。この法律は、生態系、人の生命・身体、または農林水産業に対して、特に問題となる外来種を「特定外来生物」として定め、その飼養、保管、栽培、流通、輸入などを規制し、また野外に定着したものについては優先順位の高い場所から防除を行うことを目的しています。違反者に対しては、個人の場合懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金、法人の場合1億円以下の罰金に該当する罰則が課せられます。魚類ではオオクチバス、コクチバス、ブルーギルを含む13種が特定外来生物に指定されており、全国各地でその防除の取り組みが始まっています。

ブルーギル               写真提供:一般社団法人水生生物保全協会
 外来生物の問題は、オオクチバスやブルーギルだけではありません。城北ワンド群では、外来水生植物のボタンウキクサ、ナガエツルノゲイトウ、ホテイアオイ、アゾラ・クリスタータなどが侵入しました。その中でも、特に問題となっていた外来水生植物はボタンウキクサです。これは、水面を完全に覆いつくすまでに繁茂するため、水中の光量や溶存酸素量が減少し、冬に枯死すると水底がヘドロ化して、他の水生動植物の生存に悪影響を与えていました。
 そのため、国土交通省淀川河川事務所等によるボタンウキクサの除去作業と流入防止の対策を行いました。さらにボタンウキクサの供給源となっていた淀川上流の池でも除去作業を行いました。また、ナガエツルノゲイトウ、アゾラ・クリスタータ、ホテイアオイも大阪府環境農林水産総合研究所水生生物センター(現 生物多様性センター)等による地道な除去作業によって現在ではほぼ一掃されています。


ナガエツルノゲイトウとアゾラ                              
写真提供:(地独)大阪府環境農林水産総合研究所水生生物センター
 イタセンネットでは、2012年4月から城北ワンド群で外来魚の定期駆除活動を開始しました。特殊な網もんどり(写真)の設置と地曳網による外来魚の一斉捕獲を行っています。城北地区の数か所のワンドでは、在来魚の種類と数も増加傾向にあり、捕獲による、ブルーギルなどの肉食性外来魚の抑制効果が少しずつ表れているようです。今後は毎年、春から秋までの週末に定期外来魚駆除の活動を行っています。皆さまのご協力・ご参加をよろしくお願いします。

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